試練の2020年を閉じるに当たって
コロナ禍に揺れた2020年、私たちにとっても試練の年となりました。
緊急事態宣言発令の下、3月には「校正は在宅勤務に向いている」と気楽に考えて、直ちに大半のメンバーを在宅勤務に移行させましたが、複数名での作業分担が必要となるビジネス系の案件も多く、ひとつの現場で共同作業をしてきた態勢を、10数カ所の「個人宅」に分散させ、それを統括していくのは簡単ではなかったのです。
それを思い知らされた5月末には、ほぼ全員をオフィス勤務に戻したものの、7月初めに「第2波」の到来を受けて、再度在宅態勢に戻しました。
さらに12月、規模の違う「第3波」襲来により、在宅態勢をより一層強化していく方策をとり、東京だけで1日1000人を超える罹患という事態の下で、今日に至っています。
こうしたジグザグは、言うまでもなく「何よりも命が大事」という当たり前の前提に基づくものであり、その下で校正会社に託された事業継続・納品必達という責務をいかに円滑に図っていくか、言ってみれば日本中の会社や労働者と同じ課題との格闘が問われたのです。
コロナ禍による影響は、派遣事業の現場には苛烈に発現し、雇い止めや人員削減、就労期間短縮により、春から夏にかけては売上も落ち込みました。4月末の23期決算期末には、過去最高の2億円という売上を上げたもののその後は急速にダウンし、ようやく10〜11月、恒例の就職情報誌集中月間を迎えて、一息をつくことができました(実務の面では残業をやむなくされ、一息どころではありませんでしたが)。
この間、ビジネス系業務でクライアントの皆さんから厚い信頼をかち得ることができました。私たちの仕事を評価してくださった皆様に、心から御礼申し上げます。
ただこの過程では、ビジネス系の仕事にとどまらず、単行本や雑誌の発注も引きを切りませんでした。新規の校正依頼も相次ぎ、締め切りに追われながら、ふとエンピツを置いて思い至ったことは、そうか、コロナ禍でみな、ことばや文字を求めているのだな、ということでした。誰もが巣ごもり期間のうちに、本や雑誌の頁をめくり、新しい考えやものごとを追っているのだと身に沁みて感じました。
社会経済活動全般が縮小し、人員削減やら倒産やらと厳しいニュースが相次ぐ中で、私たちのように小さな校正会社が無事に1年を終え、新たな年を迎えることができているのも、人間がものを考え、ことばを追い、文字に惹かれていくからなのだと確信を深めることができました。
試練に見舞われた2020年、もろもろ厳しい年でしたが、自分たちの仕事に確信を深め、仲間との絆や信頼を固めて新年を迎えることができたことは素晴らしいことだと思います。
非力ながら、2021年も前向きに進みます。ご支援ご鞭撻をたまわりますようお願い申し上げます。
2020/12/31 ヴェリタ 渡邉純子