語り継ぐVERITA―校正者の独り言―

<< 国連特別報告者への政府回答を批判する | main | 発見された本質 >>
【読書感想など】
0

    【読書感想など】

    こんにちは、のみかたです。カズオ・イシグロがノーベル文学賞を授与されることになりました。ノーベル文学賞って、難しい「文学」って風な人が選ばれるイメージだったので、私にとってはちょっと意外でした。イシグロは、私の中で「人気作家」という感じだったので。彼の作品は、7〜8年ほど前に『日の名残り』を読んだだけなのですが、あれは本当に面白い小説でした。人生における選択と後悔、仕事と使命と個人の幸せと…そんなテーマが、第二次世界大戦前後のイギリスを舞台に描かれます。ストーリーテリングのうまさと華麗な文体もとにかく素晴らしかったのですが、邸宅の執事としてひたすら主人に尽くし、仕事に人生をささげてきた主人公=語り手の微妙な心情の変化と後悔は、当時仕事に悩んでいた私に、ものすごい衝撃を与えました。とにかくおすすめです。

    さて、夏からずっと映画ばっかり見ていたのですが、校正者としてちゃんと活字の本も読んでいます。9月は何冊もの面白い本に出合うことができてラッキーでした。今回は、それらについて書こうと思います。

    1冊目は武田砂鉄著、『紋切型社会』(朝日出版社、2015)。日本社会にあふれる「紋切型」フレーズについて斬りまくった一冊。「育ててくれてありがとう」「誤解を恐れずに言えば」など、いろいろな場所でほとんど疑問も抱かずに発せられ、受け止められているいい加減な言葉たち。それらを掘り起こし、容赦のない批評を浴びせかける武田さんのエッセイは、皮肉がききすぎていて、一気に最後まで読み切ることはできないほどでした。究極的に意地悪な一冊。

    もう1冊は『フィリピンパブ嬢の社会学』(中島弘象著、新潮新書、2017)。書名は「社会学」となっていますが、著者の体験を主観的に記した、ルポルタージュ風の内容。大学で国際政治学を学び、「日本で働くフィリピン女性」を研究テーマに選んだ著者は、フィリピン人ホステスの取材のためフィリピンパブに通ううち、研究対象だったはずのフィリピン人ホステス「ミカ」と恋に落ちてしまう。偽装結婚をしているミカの「夫」や、マネージャーと呼ばれる暴力団関係者たちの目を盗んでデートを続ける2人。大学の指導教官、友人、両親には交際を猛反対される著者。フィリピンに一時帰国するたびに親戚に金をたかられ、苦労して稼いだ金をむしり取られるミカ。そんなある日、ミカはマネージャーから、ホステスとして働くための偽装結婚契約(もちろん違法)を解消するよう、一方的に要求される。摘発→強制送還におびえる彼女は、著者にマネージャー側とかけあってくれるよう頼む。そして2人は裏社会の男たちの待つ、閉店後の店に乗り込む……。しつこいですが、全然学問的な内容ではないのですが、とにかく一気に読んでしまう面白さです。すごくおすすめ。    (のみかた)

    | co-verita | 本・映画・演劇・音楽 | 17:31 | - | - | - | - |
      12345
    6789101112
    13141516171819
    20212223242526
    2728293031  
    << October 2019 >>
    + SELECTED ENTRIES
    + CATEGORIES
    + ARCHIVES
    + MOBILE
    qrcode
    + LINKS
    + PROFILE