語り継ぐVERITA―校正者の独り言―

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 ウィキペディアの「エンゲル係数」書き換え騒動についての私見
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     ウィキペディアの「エンゲル係数」書き換え騒動についての私見

     

     前回、「図書館の蔵書数が増えても人の知性に磨きがかかるというわけではないようです」と書きましたが、それは最近起きたいくつかの出来事を念頭に置いてます。

     一例を挙げます。1月31日の参議院予算委員会。エンゲル係数が上がって国民の生活は苦しくなっている、と追及する民進党の小川議員に対して、安倍首相は「物価変動のほか、食生活や生活スタイルの変化が含まれている」と応じました。するとその直後、ウィキペディア中の項目「エンゲル係数」が安倍の主張に沿うかのように書き換えられた、という話がありました。

    https://mainichi.jp/articles/20180223/k00/00m/040/076000c

     こちらが書き換えられる直前、

    https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B2%E3%83%AB%E4%BF%82%E6%95%B0&oldid=65817812

    そして、こちらが書き換えられた直後です。

    https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B2%E3%83%AB%E4%BF%82%E6%95%B0&oldid=67193432

     

     安倍への援護射撃ではないのかと見る向きもありますが、実際に自分の目で見ると想像以上に稚拙でした。なぜ自分の主張の根拠に事典や参考図書、経済学の専門書を用いずに小説を使うのか。そして信頼性が常に疑われているウィキペディアに寄稿したのか。「私の書いていることは信用しないでください」と言っているようなものです。

     そもそも書き換えられる前の記事でも(こちらも書き換えられたものと同様「検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分」などと指摘されているシロモノですが)、エンゲル係数が絶対的に正しいとは書いていないのです。それだけに小説を根拠にしてエンゲル係数が信頼できないかを力説するさまは一層滑稽に思えました。

     もっとも私は、ウィキペディアに書いてあることが全部でたらめだ、などと断言する気はありません。どんな事典や参考図書にも間違いはあるだろうし、記述に古さを感じることもよくあります。逆にウィキペディアには、他の事典とは違って情報を随時改訂できるという利点があります。適切に用いれば、精度の高い記述も不可能ではないでしょう。実際最近の「エンゲル係数」の記述は、専門家のレポートを論拠にして最近の社会情勢を反映したものになっています。

    https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B2%E3%83%AB%E4%BF%82%E6%95%B0&oldid=67574166

     

     それでも今回のエンゲル係数を巡る騒動と反応を見ていると、ウィキペディアに精度を求めていない人が多いということがよく分かります。そのことは予想通りで驚くことではありませんが、コトバンクやWeblioがあまり話題になっていないのは残念な話です。ウィキペディア同様に無料で使えて、プロの編纂した事典が使えるのにどうしたものでしょうか。無料で使える事典(もしくは事典のようなもの)としてウィキペディアが認知され、一方で無料で使えるほかの事典はほこりをかぶったままというのは何とももったいない。                    (てーるはっぴー)

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