語り継ぐVERITA―校正者の独り言―

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山手線の車内案内表示
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    山手線の車内案内表示

     

     このたび新たにブログを書くことになりました「command Z」です。コマンドズィーまたはコマンドゼットとお読みください。日常業務では雑誌の校正・校閲を担当しています。どうぞよろしくお願いします。

     当ブログには、校正・校閲の仕事をしていて考えたこと感じたこと、世の中の言語表現・表記・表示等に関すること、その他の話題について書いていこうと思います。(ここからは常体で失礼します。)

     通勤でほぼ毎日JR山手線を利用している。最近の多くの通勤型車両と同様、山手線車両の車内にも、客室ドア上部に液晶ディスプレーが設置され、これから停まる駅・到達時分・乗り換え路線等が表示される。便利な機能ではあるのだが、山手線に関しては違和感を覚えるのも事実である。どういうことか、最新型車両であるE235系の例で説明しよう。

     ディスプレーの表示は、数種類の内容が切り替わるようになっているが、いま問題にするのは以下の2種類だ。いずれの写真も原宿駅から渋谷駅に向かう内回り電車の車内で撮影したものである(実際にはそれぞれがさらに多言語で切り替わって表示される)。

     写真1は、これから停まる駅が5駅先まで表示される内容である。電車の進行方向に対して右側に設置されたディスプレーを撮影したものだ。この写真で言うと実際の電車は左に向かって進んでおり、画面内の進行方向と一致していて(斜めに弧を描いてはいるが)問題ない。ところが、実は進行方向左側のディスプレーにも全く同じ内容が表示されているのだ。つまり左側のディスプレーでは、電車と画面内の進行方向とが逆向きになってしまう。これがまず違和感を覚える点である。

     

     

      また写真2は、山手線の路線全体が表示される内容だ。1と同じく右側のディスプレーを撮影したもので、やはり電車は左に進んでいるのだが、ご覧のように画面内の表示では右に進んでいて逆向きだ。ちなみにこのときも、左側のディスプレーにはこれと同じ内容が表示されるので、左側のディスプレーについては、電車と画面内の進行方向が一致する。しかし電車と画面内の進行方向が一致するのが、1では進行方向右側、2では左側と違っているのも変な話である。

     そして、2では画面内の6時の位置に田端駅、12時の位置に大崎駅と五反田駅が表示されているが、この位置関係は電車が路線のどこの区間を走っていても変わらない。だから、内回り電車の右側のディスプレーについては、神田〜田端〜新大久保の区間を走っている間は、電車と画面内の進行方向が一致する(左側のディスプレーでは逆向きになる)。

     さらに外回り電車を見てみよう。2については駅の位置関係は内回りのときと同じで、進行方向を示す矢印が内回りと逆向き(時計回り)になるだけだが、1についてはカーブの向きが内回りと逆向きに(下から斜め右上に向かうように)表示される。内容自体は内回りと違えてあるものの、左右のディスプレーに同じ内容が表示されるのは内回りと同様なので、今度は左側のディスプレーでは電車と画面内の進行方向が一致するが、右側のディスプレーでは逆向きになってしまう。

     以上が、私が覚えた違和感である。ご存じのことと思うが、山手線は環状運転を行っており、しかも路線全体の形は縦(南北方向)に長いいびつな楕円形なので、これを横長の画面に収めるにはいろいろ齟齬が生じるとは思う。しかし、旧来の紙に印刷した路線図や、固定されて動かせないタイプの表示器とは違い、現在のディスプレーの表示内容は、プログラムによってかなり自由に変えられるはずである。1では車両の左右の側で表示の向きを変えて、左右の両側とも実際の電車と画面内の進行方向を一致させる、2では電車が進むに従って路線図を回転させ、どこの区間を走っていても電車と画面内の進行方向を一致させるなどは、そう難しくないことだと思われるがどうだろう。

     筆者は、山手線の案内表示が上に述べたようであっても、それが原因で、行きたいのと逆方向の電車に乗ったり、降りる駅を間違えたりすることはない。しかし空間認識が苦手で、実際の電車と画面内の進行方向が一致していないと混乱してしまう人などもいるのではないだろうか(発達障害、学習障害、バリアフリー、ユニバーサルデザイン、インフォグラフィック等に関連すると思われるが、ここではひとまず踏み込まない)。こういったところにも「人に優しいデザイン」が求められると考える。                                     

                                                                                                                                                                     (command Z)

    補注1:

     ただし実は「実際の進行方向にかかわらず、表示の向きが一定である方がわかりやすい」人もいるのである。

     カーナビの画面表示について、多くの人は常に車の進行方向が上になる(車が向きを変えるに従って画面も回転する)ように設定している(あるいはデフォルトの設定がそうなっている)と思われるが、筆者が知る範囲では1人だけ、常に北が上になるように設定している友人がいる。

     今回この記事を書くにあたってその友人に尋ねてみたところ、山手線車内の路線図の表示(上で言う写真2)についても、カーナビと同様、回転しない方がわかりやすいとのことであった。「少数派かもね」とも言っていた。「全ての人に優しい」がいかに難しいことか痛感したし、一方ではデザインについていっそう興味が深まった次第である。

    補注2:

     他形式の車両や、環状運転を行っている他線(JR大阪環状線、都営地下鉄大江戸線、名古屋市営地下鉄名城線、札幌市電等)についても、機会を作って調査してみたい。

     

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