語り継ぐVERITA―校正者の独り言―

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映画「ボヘミアン・ラプソディ」のややマニアックな感想
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    映画「ボヘミアン・ラプソディ」のややマニアックな感想

     

     ご覧になった方も多いと思うが、昨年11月24日に映画「ボヘミアン・ラプソディ」を見た。直後に感想をメモ的に書き留めておいたものがあるので、まとめておこう。

     

     前提条件として、クイーンは五指に入る好きなバンドである。中学〜高校時代にはリアルタイムでよく聴いて、1995年からはコピーバンドを組み(筆者はドラムを演奏する)、クイーン限定のセッションにも何度も参加した。クイーン全曲のおよそ半数は、バンドまたはセッションで叩いたことがあると思う。

     ただし本当に好きと言えるのは、デビューアルバム「戦慄の王女」(1973)から「ライブ・キラーズ」(1979)、もっと言うと「オペラ座の夜」(1975)まで。その後は、いいバンドだとは思うが、特別に強い思い入れがあるわけではない。

     クイーンに限らず、バンドはほぼ100%音楽が好きなのであって(あるいはそうありたいと思っていて)、メンバー同士の人間ドラマ等にはそれほど興味がない。

     とはいえ、フレディ(・マーキュリー)の死はショックだったし、それをきっかけにFMA(=Freddie Mercury Association、フレディ・マーキュリー基金)のチャリティーライブには参加した(聴きに行った)。またフレディに限らず、闘病や死を美化するような作品やメディアには否定的である。

     映画は好きで、月に1本程度は見る。自分が見たい、または見そうな映画は、内容に関わる事前情報をなるべく見ないようにしていて(見るのは映画館に置いてあったチラシ、他の映画の前に流れた予告編程度)今回もそうした。

     

     総論としては(以下ネタバレ注意)、全体的には面白く、満足。音楽はもちろん良かったし、1本の映画としてもよかった。

     ただし、予想を超えるほどではなかった(およその史実を知っているので「予想を超える感動作ということはないだろうなあ」と予想できた)。先に見た多くの知人が「泣いた」と言ったり書いたりしていたが、そういうこともなかった。

     

     ここからは、ややマニアックな各論に入る。

     まず冒頭、「20世紀FOXファンファーレ」のギター・オーケストレーションがよかった。当然のことだが、今回のためにブライアン・メイが新たにレコーディングしたものだそうだ。

     「ストーリーが一部、史実と違う」という話は事前に聞いており、ドラマの部分で多少のそれは構わないのだが、だいぶ後の曲である「ファット・ボトムド・ガールズ」(1978)が、初期のアメリカツアーで演奏されたのだけは違和感があった。

     「グッと来た」のは、「ウィー・ウィル・ロック・ユー(以下WWRY)」(1977)の曲が誕生する瞬間と、ライブエイド(1985)のステージで、「ボヘミアン・ラプソディ」からメドレーで「レディオ・ガ・ガ」に移るところ。WWRYは、だいたいあのようにしてできたのは知っていたが、映像で再現されるとまた感慨深い。

     「ボヘミアン・ラプソディ」(曲)に対して、当初は悪評ばかりだったくだりが描かれるが、その後、好評価に転じた過程はすっ飛ばすのが痛快だった。つまり、その後は好評価を得たことは誰もが知っているから、その描写は必要ないわけだ。しかし、そうした表現が成立しうるのも、すごいバンドであり、曲である。

     演じた俳優について、ブライアンは文句なく似ている。フレディはそもそも似ている俳優が少ないだろうに、やはりよく似てる。ジョン(・ディーコン)は、最初はそれほどでもないと思ったが、表情が「らしい」ので、見ているうちに似てると思えてきた(フレディとジョンは横顔の方が、より似ている)。ロジャー(・テイラー)は、顔自体はそこそこ似ているといったところだったが、イメージ的に「らしさ」が出ていた。顔自体はクイーンよりベイシティ・ローラーズなどにいそうだ。

     しかし顔だけではなく、「エア」だとしてもある程度の楽器のセンスは必要だろうし(実際に演奏できなくてもいいが)、メンバーが並んだときの身長のバランスもある程度は…と考えると至難のキャスティングだったはずだ。

     演奏場面の動き(アクション)に関しては、フレディ、ブライアン、ジョンは違和感がなかった。ロジャーは一般的なドラミングとしてはOKなのだが、動きが小ぢんまりしていて、「っぽさ」で言うと、もうひとがんばりほしかったところ。ドラムが一番似せるのが難しいとは思うが。ロジャーのドラミングはもっとワイルドというか、ややドタバタしてて、いい意味で品がない(←語義矛盾)のだ。自分がドラマーなので評価が辛くなりがちな分は、割り引いて考えているつもりである。最後「ドント・ストップ・ミー・ナウ」の本家クイーンの映像を見ても、やっぱりそう思った。ギタリストなどの意見も聞いてみたいところだ。

     …などと言って、あとでパンフレットを見たら、ロジャー役の人はまったくドラム未経験なのに、「叩ける」と言ってオーディションを受け、出演が決まってから1日10時間の特訓をしたそう。やっぱり!私の目に狂いはない!

     とはいえ、既存の音源に動きを合わせなければならないし、初期曲の原曲にはクリックが入っていないはずなので(この映画に使われた曲でクリックが入っているのは「レディオ・ガ・ガ」くらいであろうか)、それであそこまでできた努力は認めよう!

     

     「輝ける七つの海」(1974)録音場面の「『アー』を左右に振るんだ! 最後はセンター!」がよかった。もっと他の初期曲の誕生秘話も見たかったが…(「ブライトン・ロック」(1974)や「預言者の歌」(1975)のディレイとか、2ndアルバム全体とか)。

     また、デビュー当初は評論家に「クイーンが売れたら帽子でも何でも食ってやる」と言われたことなども、昔からのファンは知っているが、そのエピソードはスルーされていた。

     …が、以上2点については、「ボヘミアン・ラプソディ」のコーラス録音場面と評価の変遷に集約されており、マニアでない、本作を見る一般的な客層を考えればあのくらいがいいバランスなのだろう。

     

     最後に、見た後にパンフレットを読んでの感想を。

     マイク・マイヤーズが出ているのは知っていたが、サングラスをかけていたこともあり、見ているときはわからなかった。クイーンが大好きなのに逆の役どころというのが、とんちが利いているというかイギリスらしいというか、にやりとさせられる。

     また、いわゆる「振り付け」でなく、「ムーブメント・コーチ」という役割のスタッフがいたというのに納得した。

     そして、ライブエイドのウェンブリー・アリーナは、ロケでなくセットなのか!!!と、驚いたのであった。

     

     アカデミー賞4冠、おめでとうございます!                                                                                                    (command Z

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