語り継ぐVERITA―校正者の独り言―

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ゴジラKOM感想
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     映画「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」を、公開3日目の6月2日に見た(字幕版、THX方式)。IMAX方式の画像・音響の鮮明さと迫力には敵わないが、THXもなかなかのものである。よく行くイオンシネマがこの方式で、交通の便がよく、ひどく混雑することもないので、今回も利用した。

     ちなみに筆者はこれまでのゴジラシリーズ34作のうち、30作を劇場で(リバイバル上映を含む)、残る4作もテレビで、すべて見ている。「シン・ゴジラ」は劇場で18回見た。

     今作は2014年「GODZILLA」の直接の続編であり、前作の成功を受けて制作が決まったとのことで、前作に登場した新怪獣ムートーに代わり、日本版で人気の高いモスラ、ラドン、キングギドラが登場すると、早い段階から予告されていた(他にも前作のムートーや、「端役」の新怪獣が登場するが、メインの4体の組み合わせは、筆者が好きな「三大怪獣 地球最大の決戦」と同一である)。

     メインの登場怪獣だけでなく、今作は至るところにシリーズ過去作へのオマージュが見受けられた。

     

    ・キングギドラを「モンスター・ゼロ」とも呼称する(「怪獣大戦争」でX星人が)

    ・ラドンが火山から出現する(「空の大怪獣ラドン」の阿蘇山)

    ・モスラが中国に出現する(「怪獣総進撃」で北京に)

    ・対怪獣兵器「オキシジェン・デストロイヤー」が登場する(「ゴジラ」〈1954年版〉)

    ・「芹沢博士」(演・渡辺謙)が潜水服姿で怪獣に挑む(同)

    ・キングギドラの声が、低いながらも日本版のそれに近い(「三大怪獣 地球最大の決戦」他)

    ・劇中音楽に、伊福部昭氏が作曲した「ゴジラ」メインタイトルや「モスラの歌」が使われる(「ゴジラ」「モスラ」他)

    ・キングギドラの引力光線が、従来の口からだけではなく、翼と尾の先からも放射される(「シン・ゴジラ」でのゴジラ)

     

     他にも、インターネット上に「怪獣と意思疎通を図る機器『オルカ』のデザインが、『モスラ』で小美人を運んだ箱に似ている」との指摘が見られ、これも間違いないだろう。

     よくこれだけ詰め込んだなと思うほどのオマージュの固まりであり、そういう意味では面白かったのだが、逆にそれだけに終始してしまって、ストーリーは凡庸…というより、正直だいぶあちこち破綻していた。いわゆるご都合主義や「やりすぎ」な部分も多かった。ゴジラが吐いた放射線熱で汚染されているはずのエリアに米軍が防護服も着ないで入って行くし、あの展開では少女マディソンはギドラに10回くらい殺されていてもおかしくない。

     また怪獣はすべて着ぐるみではなくフルCGで造られているが、CGの悪い点が出てしまったように思う。特にギドラは動きがぐにゃぐにゃしすぎで生物感に乏しいのだ。モスラも光りすぎである。その一方で、ゴジラやギドラが妙に人間臭い「表情」を見せる。キングコングならあれでいいかもしれないが、爬虫類や宇宙怪獣では違和感が付きまとう。

     

     2014年「GODZILLA」はよくできていたし、東日本大震災にもきちんと向き合っていた。その監督だったギャレス・エドワーズは、今回も当初は監督を予定されていたが、スケジュール等の都合で、マイケル・ドハティに交代したとのことだ。やはりギャレスに撮らせるべきだったのでは。しかしギャレスも今作の脚本には関わっているようだし…うーん。

     とにかく「シン・ゴジラ」(2016年)のテーマ性、リアリズム、緻密さ、伏線の張り方と回収の仕方、過去作へのオマージュ、こだわり方等が尋常でなかっただけに、今作は大ざっぱさが目についてしまった。次作「Godzilla vs. Kong」では改善されているといいのだが。

     特撮・怪獣映画について、平成ガメラシリーズ3部作の金子修介監督の「怪獣映画って、怪獣自体が大嘘じゃないですか。だから怪獣以外は全部本物に見えなきゃいけないんです」という言葉に、この監督は信頼できると思ったし、実際に平成ガメラ3部作も、その流れを汲む(と言っていいだろう)「シン・ゴジラ」も、そのように作られていた。今後もそうした、大人の観賞に耐え得る良質な怪獣(特撮)映画が制作されることを望む。

     でもまあ、IMAXでもう1回くらいは見てもいいかな。(command Z)[2019/06/15記]

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