アメリカの作曲家テリー・ライリー(1935-)に、「In C」(イン・シー、「ハ長調で」の意)という作品がある。簡単に説明すると以下のような曲だ。
・楽譜があり、No.1〜53の短い単旋律のフレーズと、作曲者自身による演奏上の注意が示されている。・何人で、どんな楽器編成で演奏してもよい。声でもよい。
・個々の演奏者は、それぞれのフレーズを任意の回数だけ繰り返し、次のフレーズに移る。BPMは共有する。
・周りの音をよく聴き、お互いのフレーズが2〜3以内に収まっているのがよい(例えば自分がNo.1のフレーズを演奏しているときに、No.4が聴こえてきたら、No.2に移るのがよい)。
・強弱は自由につけてよい。
・アンサンブルを助けるために、C(ド)の音を8分音符で刻む「パルス」を入れてもよい(「指揮者」ではない)。
・演奏が難しいフレーズは飛ばしてよい。適宜休んで(演奏を止めて)もよい。フレーズの番号を戻ることはしない。
・全員がNo.53にたどり着いたら、適宜1人ずつ抜け(演奏を終了し)、全員が演奏を止めたら終わり(およそ1時間程度の演奏になることが多い)。
つまり、楽譜はあるものの、即興的な要素を含んでおり、そのつど違う演奏になるわけだ。ずれながら進行しても音楽として成立するように、巧みに計算して作曲されている。
筆者がこの曲を知ったのは、1999年に「響きのルネッサンス 音律の太平洋 モノフォニー・コンソート」という演奏会で生演奏を聴いてのことだ。ライリー氏自身も参加し、パルスは高田みどり氏であった。
その後、知人が年に1回「ゆるゆる集まってテリー・ライリー『In C』生演奏オフ会」を主催していると知り、筆者も2015年から参加している。好んで多くは野外で開催されている。筆者はいずれもパルスでの参加。もともと所有していたグラナイトブロック(大小5個セットの樹脂製ブロック)の小さい方から2番目がCの音なのでうってつけだ。
2015/09/19 @そら庵(東京都江東区):深川にあった多目的スペース的なカフェ(同月30日に閉業。元は印刷工場)。このときはまず屋内で1セット演奏し、すぐそばの隅田川堤防に移動して2セット目を演奏した。
2016/06/11 @JR鶴見線海芝浦駅(横浜市鶴見区):鉄道ファンには有名な海に面した無人駅。休日の日中は1時間以上電車が来ない時間帯があるのを利用。
2017/09/23 @宮代町郷土資料館内旧加藤家住宅(埼玉県宮代町):200年以上前に建てられた藁葺き屋根の民家で町指定文化財。以前に当ブログ「洞窟で演劇を観る」で紹介した劇団の公演の一部として。
2018/08/26 @海岸通ギャラリーCASO(大阪市港区):このときは別の主催者。大阪港に面した現代美術ギャラリーに、筆者が参加した中では最多の19人が参加。会場が広いので、パルスの音量はいつもより大きめに。事前に告知した上で、一般観覧者もいる中での演奏だったが、踊り出す人もいて楽しいことに。ギャラリーという会場の見た目的な面白さ・きれいさや、映像の編集もよくできているので、動画を紹介しておこう。 https://www.youtube.com/watch?v=p_7qz8RsjJM
2019/09/23 @取手緑地運動公園(茨城県取手市):利根川の河川敷にて。ドローンで空撮も。
2020/05/02 @オンライン:当初は代々木公園等の案も出ていたが、コロナの影響で初のオンライン合奏に。通信の遅れが軽微な音楽向けアプリもあるが、実験の意味もあってあえて会議用のZOOMを使用。案の定、音が遅れたり途切れたりしてなかなかのカオスになったが(笑)実験の意義はあった。ZOOMの音量自動調整機能やノイズキャンセル機能は、オフに設定するのがいいようだ。筆者のバーチャル背景は、ピンクフロイド「PULSE」ツアーのステージセットを設定してみた。
ちなみにBPM=96で1時間の演奏になった場合、パルスは1万1520回叩く計算になる。(command Z)[2020/05/07記]