当初は「怪獣10傑」を書こうとしたが、これまでと違い、自分の中で一般的な観点と、より個人的な嗜好とに少しずれがあると自覚した。一般的観点でベスト10を選べば、ゴジラ・ガメラ・キングギドラ・ガイガン・レッドキング・ゴモラ・バルタン星人・ゼットン・キングジョー・ベムスターといったところで、筆者の世代であれば大方納得してもらえるラインナップだろう。
筆者はこれらの怪獣ももちろん好きだが、一般的評価とはやや別のところで好きな一群がいる。ドラコ・グドン・ガイガン(上記)・バキシム(本ブログ「オレンジ色」に登場)といった面々だ。何についても最終的には「好き」に明確な理由はないことが多いが、怪獣に関しては、強い弱い・武器・劇中での役回りなどもありつつ、造形によるところが大きい。
筆頭はウルトラマン第25話「怪彗星ツイフォン」に登場した、彗星怪獣ドラコである。この回は、巨大な彗星が地球に接近するSF的設定、怪獣が3体も登場し(ギガス・レッドキング)、3体ともモノトーンに近い色調で、雪の日本アルプスを舞台に戦う絵的な美しさなど、筆者が初代マンで最も好きな回でもある。
他の2体は地球怪獣だが、ドラコはツイフォンから飛来した宇宙怪獣だ。基本的なフォルムは2足歩行・前後に長い頭部・長い尾という、ゴジラ等と同じオーソドックスなものだが、口先や角は鋭角的で全体にシャープな印象。地球の生物で言えばほぼ爬虫類に見えるが、手の先は鎌状、足にも指はなく、手足の他に背に1対の、昆虫を想起させる透明な翼があり、ここだけは鮮やかな赤い紋様。「王道感」と「異形感」が絶妙なバランスで融合し(←筆者が好きなのはここ)「外来種」であることを印象づける。全身の皮膚は黒いタイル状に白い筋が入り、シックで個性的(エレキングやダダの模様はシャツやスニーカーになっており、ドラコもぜひ商品化してほしい)。
先の4体を並べると共通点が見えてくる。
a)基本的にはオーソドックスなフォルム
b)体の各部が鋭角的に尖っている
c)手足に爬虫類や哺乳類のような指がない。手についてドラコは鎌(1)、グドンは鞭、ガイガンは鉤爪状、バキシムはケラ等の昆虫に似る
d)ドラコを除き、目は白目黒目の区別がなく、半透明で光っている(2)。グドンとガイガンは赤、バキシムは青色
e)ドラコとガイガンは背に翼がある
f)cdeに関連して、体の一部に昆虫的な要素を持つ。ドラコは翼、グドンは触角や皮膚、ガイガンはクワガタ様の牙、バキシムは手足や体節
cdefは異形=外来種感につながるが、実際、グドン(地底怪獣)以外の、ドラコとガイガンは宇宙、バキシムは異次元からやって来た。fはレギオンについての樋口真嗣特撮監督の発言「宇宙怪獣は外骨格!」にも通じる。
ガイガンについてデザインの水氣隆義は「成田亨によるウルトラ怪獣のような統一性あるデザインを目指した」そうで、おそらくドラコも念頭にあっただろう。ガイガンは腹部の回転鋸などサイボーグである点に目が行きがちだが、目(単眼)と翼(3枚)の数が奇数なのも、地球とは別の進化系統上にいることを象徴的に表していると思う。
3026年にはツイフォンが再来するので、ドラコの別個体が現れるかもしれない。
1)当初の着ぐるみは右手が鞭状だった。そのまま本編に登場していればさらに異形感が増したであろう。
2)初代マンの登場怪獣で、宇宙人等を除けば、このタイプの目はキーラだけだ。デザインの成田亨は「大きな目に光を入れることで今までの怪獣のイメージから一新を図った」そう。ドラコがセブンや新マンに登場していたら、あるいはこのタイプの目だったかもしれない。
(command Z)[2020/06/14記]