語り継ぐVERITA―校正者の独り言―

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共謀罪について思うこと(その6)
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    共謀罪について思うこと(その6

     

     6月15日、参議院本会議で共謀罪法案が自民・公明・維新の3党の賛成多数で成立しました。強行採決は予想していましたが、委員会の採決を省略するとまでは思っていませんでした。

     異例の採決に与党内にも批判の声があったようですが、一方であまり話題になっていないのが金田法務大臣の治安維持法に関する答弁です。法案は通ってしまいましたが、かなり問題のある内容で、少しでも多くの人に伝える必要があると思うので言及します。

     日本共産党の畑野議員に治安維持法によって弾圧された犠牲者の救済と名誉回復をするべきではないのか、と問われた法相は次のように答弁しました。

     

    治安維持法は、当時適法に制定されたものでありますので、同法違反の罪に係ります勾留、拘禁は適法でありまして、また、同法違反の罪に係る刑の執行も、適法に構成された裁判所によって言い渡された有罪判決に基づいて適法に行われたものであって、違法があったとは認められません。したがって治安維持法違反の罪に係る勾留もしくは拘禁または刑の執行により生じた損害を賠償すべき理由はなく、謝罪及び実態調査の必要もないものと思料をいたしております。

     

     治安維持法は戦前、社会運動の取り締まりを目的に制定され、思想の弾圧の原動力となった法律であり、戦後日本の出発点において明白に否定され、効力を停止された法律です。本来、今の日本では明確に否定されなければいけないはずです。「当時適法に制定されていた」から謝罪や実態調査をしなくてよいという理由にはなりません(当時適法といえたかも疑問です)。

     そもそも取り調べの段階で拷問が横行し(戦前も建前上、拷問は禁止)、法律の拡大解釈によって誰でも弾圧の対象とできたことを考えなければなりません。事実、多くの冤罪事件やでっち上げに基づく弾圧の数々が、被害をこうむった人々の口から語られています。治安維持法それ自体が、法律として正当な扱いを受けたとは言えないのではないかとさえ、私は考えています。法相は治安維持法違反に問われた事件について一つずつ治安維持法に基づいて正当性を立証しない限り、「違法があったとは認められない」とは言えないと思います。

     もっと追及されなければいけないはずですが、先述のとおりマスコミも世論もあまり反応していません。今村前復興大臣の「東北でよかった」発言の時と全然違います。

     なぜ金田法相の発言は追及されないのでしょうか。国際政治学者の三浦瑠麗は「治安維持法の復活」といった批判は歴史的な文脈を無視した極端な言い方で、テロが怖いと思っている普通の人はかえって賛成側に流れると主張しています(6月7日朝日新聞記事より)。確かに建前上民主主義である今の日本で「治安維持法の復活」というのは極論に映るかもしれません。しかし法相が治安維持法を問題視しない趣旨の発言をしたのは事実であり、戦後の歴史を真っ向から否定する発言であることを直視すべきではないかと考えます。「極端な言い方」と退けるのではなく、この事実を受け止め、いかに向き合うかを語るべきだと思います。

    今回で共謀罪についての考察は終わりますが、次回以降も今の社会に対して思うことを自分の言葉で語っていきます。   (てーるはっぴー)

     

    【管理人より】

    (はっぴー)氏からは2週間も前に投稿をいただいていました。管理人が日々の雑務に追われてアップできず、(はっぴー)氏にも皆様にも大変ご迷惑をかけてしまいました。申し訳ありません!

    それにしても、共謀罪は本当に静かに滑り出してしまいました。かつて「治安維持法」も、同じように静かに滑り出し、体制に反対する人間もそうでない人間も、体制の側が「気にくわない」人間であれば誰でも、過酷に弾圧する「武器」となってしまったことを、歴史を少しでも学んだ人間は想起しなければなりません。

    その後の流れを見れば、(はっぴー)氏が述べた、委員会の採決さえもすっ飛ばすという無茶苦茶なやり方に対しても、東京都民は抗議の声を上げたのではないかと思います。世の中の流れを、赤ペンとエンピツと、消しゴムの屑にまみれる毎日の中からじっと見つめていきたいと思います。

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