語り継ぐVERITA―校正者の独り言―

ヨイショ感想文募集への道(後編)
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    ヨイショ感想文募集への道(後編)

     

     『殉愛』を巡る騒動で百田尚樹を巡るタブーが満天下に知れ渡ってから4年。この間も百田の放言と出版業界の傍観は相変わらずで、正直自分も食傷気味になっていたところに爆弾は投下されました。『日本国紀』という名の爆弾が。

     既に買ったり、書店や広告で見たりした方も多いと思いますが、『日本国紀』とは昨年発売された百田の著書。帯には「日本通史の決定版!」と銘打たれ、百田本人も「書かれていることはすべて事実」と豪語するほどの自信作です。

    https://twitter.com/hyakutanaoki/status/1058930674701193216

     

     しかし『殉愛』同様、発売当初から記述についての疑問が続出。例えばこんな感じで。

    https://twitter.com/shinhori1/status/1062146492935286785

     

     それに対する百田の返答がこれ。

    https://twitter.com/hyakutanaoki/status/1062269003773759488

     

     端的に言って反論になっていないと思うのは私だけ?まあ、百田がどう反論しようと『日本国紀』は増刷後修正がかけられました。「書かれていることはすべて事実」ではなかった、ということです。

     そして『日本国紀』にはもっと大きな問題点が指摘されています。盗用です。参考文献の記載がないのに、他人の著書、はてはウィキペディアの記事までほぼ丸写ししている、というのです。

     言うまでもなく盗用は物書きにとって致命的な行為ですが、百田は危機感ゼロ。あっさりとウィキペディアから「引用」したことを認めました。

    https://twitter.com/hyakutanaoki/status/1065064111283699712

     

     「引用」と書いていますが、きちんとウィキペディアによることを明記していなければ引用とは言えません。ウィキペディアを使ったのを知られたくなくて明記しなかったのかもしれませんが、書かなければばれないとでも思ったのでしょうか。

     それとも、自分は出版界のタブーだから何やっても大丈夫だという意識があるのでしょうか。百田と接点のある出版社はほぼ黙っているし、『日本国紀』の版元の幻冬舎に至っては百田を批判した作家の津原泰水の小説の文庫化を直前になって中止しただけでなく、津原作品の実売部数を暴露しました。実売部数の公表はタブー破りだと物議を醸しましたが、問題の本質はそこじゃありません。儲からない奴は黙っていろという意思表示をしたということが一番の問題なのです。

    https://twitter.com/j_geiste/status/1129597841880506368

     ウィキペディアをパクる作家、アマチュアに指摘されて間違いを直す編集者、盗用であるか否かという問いにまともに答えられない出版業界。『日本国紀』を巡る一件は、控えめに言っても最低です(その後、ヨイショ感想文募集の話が出て最低記録は更新されましたが)。よくテレビ業界のやらせが話題になりますが、きちんと話題になって世間から批判されるだけ百田たちよりマシです。

     以上、2回にわたってヨイショ感想文募集という醜態を生んだ土壌がどのように作られていったか、その流れを見てきました。「以前からあった問題」とは何か、分かっていただけたかと思います。出版業界の皆さん、プロフェッショナルの矜持というものを見せてくださいよ。今からでも遅くはないはずです、多分(遅かったとしてもやってください)。

    (てーるはっぴー)

    | co-verita | 社会の動き | 20:04 | - | - | - | - |
    ヨイショ感想文募集への道(前編)
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      ヨイショ感想文募集への道(前編)

       

       前回、百田尚樹の小説『夏の騎士』の感想文募集を巡る騒動について「ヨイショ感想文募集という事態は突発的に生じたのではなく、以前からあった問題を放置した末に生じた産物だ」と書きました。今回はヨイショ感想文募集に至った過程を振り返ってみようと思います。

       『永遠の0』が大ヒットしてベストセラー作家となった百田ですが、話題になったのは作品だけではありません。作品の外でも右派向けの言動で注目されていました。例えばこんな感じで。

      https://twitter.com/hyakutanaoki/status/335778038639894528

       

       その後、2013年11月にNHKの経営委員に就任したあたりから彼の言動はヒートアップしていきます。典型的だったのは2015年、自民党の若手議員の会合で「沖縄の2つの新聞はつぶさないといけない」と発言したことでしょう。

       個別の主張を批判するのではなく、気に入らない言論機関をつぶせということ自体、決して筋のいい話ではありませんが、政権与党の国会議員が主催する会合でそんな発言をしたら、権力を使って言論機関を弾圧するつもりと思われて当然です。極めて悪質な発言だということは当の百田自身、「冗談」なんて言い逃れをしていることからも分かると思います。

      https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS28H2P_Y5A620C1PP8000/

      https://twitter.com/hyakutanaoki/status/615122704971075584

       

       当然新聞などでも大きく報じられましたが、私の記憶では出版社系週刊誌はほとんど動かなかったと思います。言論の自由を脅かすという意味で、出版社にとっても看過できない話だったのに。ベストセラー作家には物が言えない、ということでしょうか。

       お前の記憶違いじゃないか、って? 百田の発言は確かに問題だが、ああいう発言はほかにもあるし、作品の問題じゃないから出版社が追及しないのは無理からぬ話じゃないか、って? 私の記憶に関して言えば、当てにならないというのは自分が一番よく分かっているつもりです。

       しかし、仮に出版業界が批判していたとしても、百田の放言がその後も続いているのを見れば、ほとんど意味を成していないのと同じことです。そして沖縄2紙に対する発言より前に、百田は自著の信頼性を失わせるような騒動を起こしています。

       2014年、百田は歌手のやしきたかじんの闘病生活を描いたノンフィクション『殉愛』を発表しましたが、その内容を巡って多くの疑問がネット上で噴出。さらに名誉を傷つけられたとして、たかじんの長女や元マネージャーが百田を訴える事態に発展しました。

       しかしここでも出版業界の動きは鈍かったです。そして身もふたもない発言が月刊誌『WiLL』編集長(当時)の花田紀凱から飛び出しました。

      https://news.yahoo.co.jp/byline/hanadakazuyoshi/20141210-00041395/

       

       花田は百田を擁護しているんですが、百田に対する訴えを「週刊誌もワイドショーもどこも取り上げない」ことを認めたうえで、取り上げないのは当然だとのたまっているわけです。こんなことを書く方も書く方ですが、書かれる方も書かれる方です。

       せめてこの時、立ち止まって考えることができれば。しかし、転落は続くのです。

      (てーるはっぴー)

       

      | co-verita | 社会の動き | 12:29 | - | - | - | - |
      ここまでやっちゃうか
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        ここまでやっちゃうか

         

         政治的な話題が続いて単調になってきたので、私生活を振り返ってみましたが、最近はいつにも増して話題がありません。平日は仕事、休日は家事と録画したテレビ番組観賞そして図書館で読書という日常は相変わらず。健康診断やオフィス移転もつつがなく終わり、変わったことといえば部屋のLEDシーリングライトが突然故障したくらい。しかしそれも思いのほか順調に解決し、ここで詳しくレポートするような停電生活を送ることもありませんでした。

         原稿どうしようかと思っていると、突如としてとんでもない話が飛び込んできました。とんでもない話は過去にもありましたが、今回は次元が違います。異世界に飛ばされたかと思うほどの衝撃でした。

         初めに書きます。心臓の弱い人は見ないでください。それ以外の人は心してご覧ください。

         それではどうぞ。

        https://buzzap.jp/news/20191005-natsunokishi-yoisho/

         

         どうですか?我が目を疑って二度見してませんか?現実です。百田尚樹の小説『夏の騎士』をヨイショして、優秀なヨイショと認められたら図書カードが当たるという企画が実在したのです。

         いやしかし、人をヨイショする企画はたくさんあるでしょうが、自分でヨイショしてくれと頼む企画なんて初めて見ましたよ。しかもベストセラー作家が、金品までつけて。人参ぶら下げないとヨイショも出てこないような駄本だと言ってるのも同然じゃないですか。

         でも…。本気でやっているのではなく何か意味深なメッセージが込められているのではとも思いました。例えば、百田が裸になっているのは実は裸の王様を暗示していて、ヨイショを募集するという行為も自分の現状を自虐的に風刺しているのでは、という具合に。

        しかし、企画がすぐに中止になったのを見ると、やはり文字通りヨイショを集める気でいたか、もしくはヨイショを集めると発表したらウケると考えていたようです。百田本人は「全部をお任せにしていた」とあたかも何も知らなかったかのようにツイートしていますが、

        https://twitter.com/hyakutanaoki/status/1180473595421585417

         

        言われるままに脱いで金ピカになって、図書カードを持ってたんですかね。前述『BUZZAP!』記事には別の広告も紹介されていますが、百田の了解を得たと書いてあります。ヨイショ募集だけは了解を得ていなかったんですかね。百田本人も企画の趣旨をよく理解していた上で参加したと考えるのが自然で、「全部をお任せにしていた」とは白々しい。知らなかったとしたら相当なアホです。

         さて、今回の件、多少は話題になりましたが、迅速に中止が決まったこともあってか、急速に過去のものになろうとしています。しかしまだ十分に言及されていない観点があります。ヨイショ感想文募集という事態は突発的に生じたのではなく、以前からあった問題を放置した末に生じた必然的な産物だ、ということです。ただのおふざけだと思ってやり過ごしていい問題ではありません。

        (てーるはっぴー)

        | co-verita | 社会の動き | 17:45 | - | - | - | - |
        自分より下だと思ってますか?
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          自分より下だと思ってますか?

           

           台風15号が直撃し、千葉県の各地で長期間にわたって停電が発生。復旧がなかなか進まない状況の中で、一人の政治家が奮闘していることはあまり話題になっていません。先日の内閣改造で内閣府大臣政務官に起用された今井絵理子参議院議員です。

           …と書いたら皆さん驚かれるでしょうか。まだ1期目で政治のことなんて何も勉強していないような輩が一体何を頑張っているのかと。私の知る範囲では、今井の政務官就任を支持する声は見たことがありません。

           確かに内閣府大臣政務官という仕事が今井に適任か、というと私もそうは思っていません。しかし、彼女は、自分の本当の役割を見事に遂行しているといえます。「おとり役」として。

           今井が役職に就くことで、現状に対する不満や憎悪は彼女に向けられます。そして誰もが今井を非難し、他のさまざまな問題から注意をそらさせているわけです。

           でも、彼女は一方的に怒られる立場なのでしょうか。内閣府大臣政務官は、なりたい人が立候補してなれる仕事ではありません。閣議の決定を経て初めてなれるのです。辞退しろという声があるかもしれませんが、一年生議員が内閣の意向をつっぱねるのは容易ではないでしょう。

           言われたとおりに役職を引き受けただけなのに、自分一人で批判の矢面に立ち、政権の安定に寄与する。なおかつ反論はおろか、愚痴の一つも言わない。なんと素晴らしい自己犠牲の精神でしょう。

           もし、今井が政務官になったことに本気で不満があるなら、内閣を追及するのが筋でしょう。あるいは今井に代わる適任者を提示するとか。でも、そんな動きは起きずに七十五日もたたないうちに忘れ去られるでしょう。本気で怒ってるならそもそも今井を国会議員にさせませんし、今まで続けさせていませんって。

          むしろ私たちには今井のような政務官がふさわしいんじゃないですか。ほら、この発言なんて皆さんの理想じゃないですか。

          https://twitter.com/Eriko_imai/status/878072125252182017

           

          まあ今井に対しては今回の件に限らずほとんど批判だらけですけどね。何か批判するとお約束のように「代案を出せ」という人が出てくるものですが、今回は見当たりませんね。どこ行ったんでしょうか。

           もっとも、「おとり役」は過去にもいたので、もう慣れてしまってありがたみを感じていないだけかもしれません。桜田義孝元オリンピック・パラリンピック担当大臣もその一人でしたが、思えばかわいそうな人でした。自分でパソコンは使ってないとか言ったら、海外のメディアにまで取り上げられてしまいました。言い返せばいいのにと思いましたよ、「俺なんて大したことない、総理なんて憲法を理解していないぞ」ってね。

          (てーるはっぴー)

          | co-verita | 社会の動き | 14:28 | - | - | - | - |
           まだ遅くはない
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             まだ遅くはない

             

             今回は当初『週刊ポスト』9月13日号の特集について書こう、と思っていましたが、筆が一向に進まぬうちに理路整然とした怒りの声が次々と出てきて、書くことがない、どうしたものかと考えているうちにこんな記事を目にしました。

            https://www.yomiuri.co.jp/sports/etc/20190907-OYT1T50084/

             

             マラソングランドチャンピオンシップで、熱射病の症状が出ている選手のためにゴールに氷入りの風呂を置くそうですよ。で、オリンピックでも実施する見通しだというのですよ。

             オリンピック絡みでは今までも信じられない話があったので、もう驚くこともないと思っていましたが、それでもこの記事には絶句しました。とうとうバラエティ番組のネタにまで進出したかと。熱湯風呂から飛び出て、氷の入ったタライに駆け寄るダチョウ倶楽部を想像しちゃいましたよ。

             底が抜けているとしか思えませんが、ここで一旦冷静に。スポーツのことも熱射病のこともよく知らないのだから、簡単に馬鹿馬鹿しいと決めつけてはいけません。歴史関係でろくな証拠もなく生半可なことを吹聴している人たちの醜態はよく見てきたはず。

             少し調べてみたらこんなのを発見。

            https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/supoken/doc/heatstroke_0531.pdf

             

             この『スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック』(以下、『ガイドブック』)では、「熱射病が疑われる場合の身体冷却法」として氷水浴法を推奨しています(P9)。どうやら荒唐無稽な考えとは言えないようです。

             でも…『ガイドブック』にはこんなことも書いてありました。「いったん熱射病を発症すると、迅速適切な救急救命処置を行っても救命できないことがある」(P6)と。前述記事の日本陸連の山沢医事委員長の「こうした暑さ対策こそマラソンのレガシー(遺産)」という発言はやはり能天気と思われても仕方がないのではないでしょうか。語るべきは「レガシー(遺産)」なんて抽象的な表現じゃなくて、氷水浴法にどのような効果があるのか、過去にどれだけ利用されてきたのか、についてでしょう。そして氷水浴法は万能ではないということをきちんと伝えるべきでしょう。

             最後に。既成事実が積み重なっているのを承知で書きます。

             東京オリンピック、やっちゃダメなんじゃないですか?専門家が科学的な知見を語らない(語れない?)。この一点だけでも再考に値するとは思いませんか。

            (てーるはっぴー)

            | co-verita | 社会の動き | 18:21 | - | - | - | - |
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